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2021.03.15 【同一労働同一賃金に向けた法改正のお知らせ】新潟の税理士がお送りするブログ

【同一労働同一賃金に向けた法改正のお知らせ】新潟の税理士がお送りするブログ

 

この記事はヒューマン・プロ社会保険労務士事務所から寄稿されました。

 

令和2年4月1日から、パートタイム・有期雇用労働法の施行により、大企業で正社員とパートタイマーや契約社員等の非正規社員との不合理な待遇格差が禁止されており、令和3年4月1日からは、中小企業でも禁止されます。
中小企業の皆様には、今一度会社の待遇・労働条件の実態を検証し、不合理な待遇格差是正に向けてご準備される事をお勧めします。

 

「不合理な」待遇格差とは?

政府が推進している「働き方改革」の一環に「同一労働同一賃金」があり、正社員と非正規社員との待遇の格差の解消が課題となっています。

同じ会社で働く正社員と非正規社員の間に「職務の内容」「人材活用の仕組み」「その他の事情」を勘案した上で、待遇の格差の合理性は判断されます。

 

職務の内容

  • 「業務内容」:いわゆる仕事の内容
  • 「責任の程度」:責任・権限の程度、役割の範囲、緊急時等の対応などの内容

人材活用の仕組み

  • 転勤の有無、人事異動による配置転換・昇任など

その他の事情

「職務の内容」「人材活用の仕組み」「その他の事情」に違いがあり、その違いに見合う格差は「不合理」でなく(「均衡」待遇の原則)、許容範囲内と判断されます。
しかし、「職務の内容」「人材活用の仕組み」「その他の事情」が同じ場合、待遇に相違を設ける事が禁止されます。(「均等」待遇の原則)

 

説明が求められる場面

パートタイム・有期雇用労働法では待遇差がある場合、その待遇差の内容・理由その他の事情について説明する事が義務化されています。

 

説明が必要となるタイミング

  1. 非正規社員を雇い入れる時
  2. 当該労働者より説明を求められた時

説明が必要となる待遇差

  • 基本給・昇給
  • 賞与
  • 各種手当
  • 福利厚生
  • 休職・休暇
  • 教育訓練
  • 安全管理

この場合、上記の個々の待遇ごとの差異について、具体的に説明する必要があり、単に「役割が違うから」「非正規社員だから」といった抽象的な内容では、不合理な格差と見なされます。

 

最高裁判決(賞与・退職金)

令和2年10月に、正社員と非正規社員の待遇の格差の是非を巡り、3件の最高裁判所判決にて、格差の是非と格差見直しへの枠組みが示されました。

 

10月13日、「大阪医科大学事件」(有期労働契約の更新を繰り返していたフルタイムのアルバイト職員が、賞与の支給を求めた訴訟)で最高裁は、正職員には毒劇物の試薬管理などの業務があるほか、配置転換の可能性も踏まえて職務の内容に「一定の相違があった」とし、賞与の不支給を「不合理な待遇格差」に当たらないと判断しました。

 

また同日、「メトロコマース事件」(10年近く勤務していた東京メトロ子会社の売店の元契約社員が、退職金の支給を求めた訴訟)でも最高裁は、契約社員と正社員との間の役割の違いを理由に、原告の訴えを退けました。

 

この2件は、いずれも正社員への段階的な登用制度があったという「その他の事情」も原告の訴えを退ける根拠となっております。

 

最高裁判決(手当・休暇)

一方、10月15日の日本郵便事件(有期労働契約を繰り返し更新していた契約社員が、扶養手当や年末年始勤務手当、祝日給(年始割り増し)、夏期・冬期休暇、有給の病気休暇の5項目の支給を求めていた訴訟)で、最高裁は個々の手当・休暇の趣旨を踏まえ、そのうちの扶養手当について、「扶養親族のある者の生活保障」とし、「継続的な雇用を確保する目的」と位置づけ、契約社員でも継続的な勤務が見込まれる場合、支給の対象となると判断し、他の4項目も同様と認め、また、基本的な業務内容は同じだったことを理由に、手当の不支給等を「不合理な格差」と判断しました。

 

最後に(トラブルになる前に)

一連の最高裁判決では、正規・非正規社員の待遇の格差について、

  1. 正社員向けの諸待遇とその目的が非正規社員にも当てはまるか否か
  2. 正規社員と非正規社員の間の職務の内容が同じか否か
  3. その他の事情

がその是非の分岐点として、格差是正の指針が示されました。

 

行政(都道府県労働局)による事業主への助言・指導等、
短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇差等について紛争になっている労働者または事業主が無料で利用できる裁判外紛争解決手続(行政 ADR)による労使間の調整、
あっせんによる紛争の円満な解決を図る制度
も設けられ、このようなサービスの利用も有効と思われます。

4月からの改正法の施行を前に、待遇格差是正のための検証、人事考課制度の設計、そしてその先の働きがいのある職場作りのためには、従業員個々人の1.業務の役割・難易度、2.能力、そして3.給与など個々の待遇について的確に把握・評価することが不可欠だと思います。
実際に検証し、評価する場面においては、上記の判決の他、下記の資料も参考にすることをお勧めします。

参考

 

※当ブログの記事は執筆時の法律に従って書かれています。
法改正等により記載内容との相違がある場合がございます。
あらかじめご了承ください。

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