2018.09.28 【被災地への義援金で税金が安くなるのか(個人の場合)】新潟の税理士がお送りするブログ
今年もまだ半ばですが、日本中で災害の多い年になってしまいました。
住んでいる自治体とは違う自治体へ寄附ができ、返礼品をもらえてさらに税金がちょっとお得になるというふるさと納税という制度もかなり浸透してきて、確定申告に向けてどこかに寄附でもしようかな、とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
先日ある個人事業主のお客様より、災害被災地に義援金を支払ったとして寄附をしたいのだけれど、そのような場合に、税金が安くなるかについて尋ねられました。
答えは、「はい」です。
被災地への義援金は寄附金の扱いとなりますので、寄附金控除の対象となり控除を受けることができます。
ただし、義援金を送ると一口に言っても、直接被災した自治体に送る、支援団体を通じて送るなど様々です。被災地への義援金に関してはその支払先によって、控除内容は変わってきます。
所得税と住民税が控除されますが、支払い先によっては所得税のみの控除だったり、控除が受けられない場合があります。
また、控除を受けるためには基本的に確定申告が必要になります。
それでは主な支払先3パターンについて、それぞれどのような控除が受けられるのか見ていきたいと思います。
パターン1:被災地の地方公共団体に設置された災害対策本部への義援金
まず初めに被災地の地方公共団体に設置された災害対策本部への義援金を送る場合です。被災地に直接義援金をしているイメージかもしれません。
個人が被災自治体の災害対策本部に支払った義援金は、寄附金控除(所得控除)の対象となるため、所得税において控除を受けることができます。
またこのパターンの義援金は、地方公共団体に対する寄附金としてふるさと納税に該当するため、個人住民税においても控除(税額控除)を受けることができます。
このパターンではワンストップ特例の適用が可能です。
所得控除と税額控除の違い
- 所得控除:税額を計算する前の所得に控除が適用
- 税額控除:計算後の税額に控除が適用
ふるさと納税ワンストップ特例制度とは
確定申告が不要な給与所得者で、かつふるさと納税の寄附先団体が5団体以下である場合に、確定申告をせずとも寄附金控除が受けられる制度です。
この制度を受けるためには、寄附先団体に対し、「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を提出する必要があります。
また所得税からの控除は発生せず、全て住民税において控除されます。
※ふるさと納税ワンストップ特例制度についての詳細はこちら
ー 総務省ふるさと納税トピックス:制度改正2 手続きの簡素化(「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の創設)
パターン2:日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会の専用口座に支払った義援金
災害があった際に、日本赤十字社や中央共同募金会が、「専用口座」を設けて義援金を募集しているのを見たことがありますよね。
このパターンの義援金も、所得税における寄附金控除(所得控除)の対象となります。
ただし寄附金控除の対象となるためには、「義援金が最終的に地方公共団体(義援金配分委員会等)に対して拠出されるもの」であることが条件です。
そのため、自分の支払った義援金が最終的にどこに拠出されるのか、これについては支払先である日本赤十字社や中央共同募金会のホームページ・募金要綱等で確認する必要があります。
ちなみにこの場合の義援金も、地方公共団体に対する寄附金としてふるさと納税に該当するため、個人住民税においても控除を受けることができます。
ただしパターン1とは違い、ワンストップ特例の適用はできないため確定申告が必要となります。
パターン3:被災地で救援活動等を行っているNPO法人に対して支払った義援金
個人が被災地での救援活動等を行っているNPO法人に支払った義援金は、「認定NPO法人等に対する寄附金」に当てはまる場合(※)に、所得税において寄附金控除(所得控除)と寄附金特別控除(税額控除)の選択適用となりますが、住民税の控除はありません。
このパターンの義援金は、ふるさと納税には該当せず、ワンストップ特例の適用もありません。
認定NPO法人等に対する寄附金に該当する条件
- 支払先のNPO法人が「認定NPO法人等」である
- 支払った義援金がその認定NPO 法人等の行う特定非営利活動に係る事業に関連するものである
認定NPO法人等の一覧は、内閣府NPOホームページにおいて確認できます。
認定NPO法人等以外の法人等に対して支払った義援金
認定NPO法人等以外の法人等に対して支払った義援金がまったく控除の対象にならないかというと、そういうわけでもないようです。認定NPO法人等以外の法人等に対して支払った義援金は次のようになります
公益社団法人・公益財団法人の場合(その法人の主たる目的である業務に関連するものに限る)
寄附金控除(所得控除)の対象となります。
支払先が一定の要件を満たす公益社団法人・公益財団法人である場合には、寄附金特別控除(税額控除)との選択適用可。
NPO法人(認定NPO法人等でないもの)、人格のない社団等の場合
寄附金控除の対象となりません。
※都道府県または市区町村が条例において個別に指定することにより、個人住民税の寄附金控除の対象となる場合があります。
言葉だけではちょっとややこしいので、簡単にまとめたのが下の一覧です。
パターン | 所得税 | 住民税 | ふるさと納税 | ワンストップ特例 |
---|---|---|---|---|
被災地の地方公共団体に設置された 災害対策本部に対して支払った義援金 |
○ | ○ | ○ | ○ |
日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会の 専用口座に対して支払った義援金 |
○ | ○ | ○ | × |
被災地の救援活動等を 行っているNPO法人に対して 支払った義援金 |
○ | △ | × | × |
ふるさと納税のできるWebサイトを利用する
被災地支援をしつつ、かつ控除を受けるためには
これまで見てきたように、被災地支援のための義援金でも、様々な義援金があります。1番の目的は被災地支援であることに変わりはないですが、同じ義援金を支払うなら、控除を受けられるほうがいいですよね。 しかし、せっかく送った義援金が所得税や住民税において控除対象となる寄附金に該当するためには、一定の要件を満たす必要があり、確認が少し手間に感じるかもしれません。
そこで、ちゃんと控除も受けられ、義援金を被災地へ送るための方法として薦めたいのが、ふるさと納税のできるWebサイトを利用した寄附です。
ふるさと納税ができるWebサイトでは、通常のふるさと納税のほか、「災害支援」を目的としたふるさと納税の募集を行っています(返礼品はないようです)。集められた寄附金は、直接被災自治体へ届けられます。
受けられる控除は?
ふるさと納税のできるWebサイトを利用した寄附も、通常のふるさと納税を行った場合と同様になりますので、所得税・住民税の両方で控除を受けることができます。もちろん、ワンストップ特例制度を利用することもできます。
ふるさと納税を行った場合の控除額
ふるさと納税を利用した場合は、
ふるさと納税額 = 控除額 + 自己負担額2,000円
となります。控除額は所得税における寄附金控除 + 住民税における寄附金税額控除
です。
1.所得税における寄附金控除(所得控除)
寄附金額(※)‐2000円
※総所得金額の40%が限度
詳細は、国税庁ホームページにてご確認ください。
2.住民税における寄附金税額控除
基本分(A)+特例分(B)
が住民税における控除額となります。
A.基本分 = 寄附金額(※)‐2000円 × 10%
※総所得金額の30%が限度
B.特例分 = (寄附金額-2,000円)×(90%-所得税の税率×1.021)
※ただし、住民税所得割額の2割を上限となります。
3.ワンストップ特例制度を適用した場合
基本分(A)+特例分(B)+申告特例分(C)が住民税における控除額となります。
A.基本分 = 寄附金額(※)‐2000円 × 10%
※総所得金額の30%が限度
B.特例分 = (寄附金額-2,000円)×(90%-所得税の税率×1.021)
※ただし、住民税所得割額の2割を上限となります。
C.申告特例分 = 特例控除額(上記(B))× 所得税の限界税率×1.021 / 90% - 所得税の限界税率×1.021
計算式を掲載しましたが、ちょっとわかりにくいと思います。
そこで、総務省ふるさと納税ポータルサイトでは、ふるさと納税についての詳細や寄附金控除額シュミレーションができます。
こちらを利用して計算するのが簡単ですね。
通常寄附金控除を受けるためには確定申告をしなければなりません。 その際、義援金の受領証など、寄附をしたことが分かる書類が必要となりますので、既に寄附をされたという方は、確定申告までこれらの書類を破棄せず保管しておくことが必要です。
最後に紹介したようなふるさと納税のできるWebサイトから、ワンストップ特例を利用すれば確定申告も不要になりますので、簡単に、というよりも気軽に義援金を送ることができます。
今回は個人の方の被災地への義援金は所得税と住民税の控除が受けられることと、ふるさと納税を活用した被災地支援を紹介しました。
ひとくちに被災地への義援金といっても、いろいろな方法があることもわかりました。
被災地支援にもいろいろな方法があると思いますが、こういう制度もあるので活用していたいですね。
※当ブログの記事は執筆時の法律に従って書かれています。
法改正等により記載内容との相違がある場合がございます。
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