2021.05.25 【年次有給休暇の基本要件と5日間の有給取得義務】新潟の税理士がお送りするブログ
この記事はヒューマン・プロ社会保険労務士事務所から寄稿されました。
有給状況を確認してください、と度々頼まれることがあります。
有給休暇の消滅期間があることや、2019年4月から施行された5日間の有給取得義務など、意外と有給について知らないことも多いのではないでしょうか。
ご自分の有給状況は管理できていますか?
有給休暇の要件
有給休暇が10日間付与されるには要件があります。
- 雇入れ(入社)してから6ヶ月継続して雇われること
- 全労働日の8割以上出勤していること
上記2つの要件を満たして始めて有給休暇が付与されます。
付与される日数については、下記表の通りです。
正社員の場合は入社6ヶ月後に10日間の付与ですが、パートタイム労働者で正社員よりも労働日数が少ない場合は別途付与日数が定められています。
具体的には、週の労働時間が30時間未満で、週の労働日数が4日以下または年間の労働日数が216日以下の労働者が下記の表にあてはまります。
遵守事項
有給休暇のルールとして、
- 労働者が請求する時季に与えること
- 有給休暇の時効は2年であること
- 有給休暇取得により給与や賞与などの減額などの不利益な取り扱いをしてはいけないこと
の3つがあります。
労働者が請求する時季に与えること
有給申請があった場合には基本的に与える必要があります。ただし、労働者の有給申請をした日が事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季に変更することもできます。
有給休暇の時効は2年であること
有給休暇は未消化分を次年度に繰り越すことができます。しかし、繰り越せるのは2年までで、3年目以降には未消化分の有給休暇は消滅します。
具体的には、3年目の労働者が1年目の有給休暇5日間を使わなかった場合、1年目の5日間が消滅します。
有給休暇取得により不利益な取り扱いをしてはいけないこと
有給休暇取得に伴い、精皆勤手当を支給しない、有給休暇の日を欠勤扱いとして控除するなどの不利益な取り扱いはしないようにしてください。
取得義務
有給についての基本的な考え方は上記の通りです。
では、新たに施行された有給休暇の取得義務についてです。2019年4月から年5日の有給休暇を労働者に取得させることが使用者の義務となりました。
対象者 | 期間 |
---|---|
有給休暇が 10日以上付与される労働者 ※1 |
有給休暇を10日間付与した日から 1年の間に5日間の有給休暇取得 ※2 |
5日取得の有無
5日取得ができていない労働者には、使用者側が労働者の意見を聴衆し、労働者の希望に沿う時季に有給休暇を取得させる必要があります。
しかし、既に5日の取得ができている労働者には使用者側から働きかける必要はなく、時季を指定することもできません。
※1 パートタイム労働者などで有給休暇が7日など10日に満たない場合、取得義務はありません。
※2 例えば入社時の4/1に5日付与し、入社後6ヶ月の10/1に5日付与する場合、有給付与日は翌年4/1(最初に有給を付与した日)ですが、有給取得義務の対象期間は10/1~9/30までの間に5日取得をする必要があり、付与日と対象期間にズレが生じるため注意が必要です。
罰則
取得義務に違反した場合、その他に就業規則に時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について記載がない場合、罰則が科せられることがありあます。
違反事項 | 違反内容 | 罰則規定 | 罰則内容 |
---|---|---|---|
労働基準法 第39条第7項 |
年5日の年次有給休暇を 取得させなかった場合 |
労働基準法 第120条 |
30万円以下の罰金 |
労働基準法 第89条 |
使用者による 時期指定を行う場合において、 就業規則にし際していない場合 |
労働基準法 第120条 |
30万円以下の罰金 |
労働基準法 第39条 (第7項除く) |
労働者の請求する時期に 所定の年次有給休暇を 与えなかった場合 |
労働基準法 第119条 |
6か月以下の懲役 または30万円以下の罰金 |
日本は世界的にみても有給の取得が少ないと言われています。
人手不足などの有給取得がしにくい現状はありますが、有給取得の義務化は心身のリフレッシュを図ることが目的とされています。
新型コロナウイルス感染症により働き方が大きく変わっている昨今ですので、有給の取得についても見直されてはいかがでしょうか。
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