2020.12.25 【医業収入の区分と消費税及び事業税について】新潟の税理士がお送りするブログ
季節はもう冬ですね、寒くなってきました。身も心も寒いです。でも仕事やります。やらないとです。仕事ですからね。
今回のブログは医療機関を経営している方や、医療機関で経理をされている方向けの内容になります。
医療機関における収入(以下、医業収入と呼びます)はたくさんの種類があります。
収入の種類により、かかってくる税金の種類も変わります。
どの取引(どの収入)にどの税金がかかるか判断が難しい時はありませんか?
今回のテーマは「医業収入の区分」ごとに、「どの取引が消費税及び事業税の対象になるのか」について述べていきます。
医業収入の区分と税金の種類の概要
収入に対する税金の種類
医療機関における収入に関する主な税金は次なようなものがあります。
個人/法人 | 税金の種類 | 概要 |
---|---|---|
個人事業主 | 所得税 | 国税 個人が事業で(以外でも)得た所得と併せた総所得にかかる税金 |
個人事業主 | 個人事業税 | 地方税 個人事業主が営む事業に対してかかる税金 |
個人事業主 | 住民税 | 地方税 個人が事業で(以外でも)得た所得と併せた総所得にかかる税金 |
法人 | 法人税 | 国税 法人が1事業年度内に得た利益にかかる税金 |
法人 | 法人事業税 | 地方税 法人が1事業年度内に得た利益にかかる税金 |
法人 | 法人住民税 | 地方税 法人が1事業年度内に得た利益にかかる税金 ただし、均等割分については利益がなくても発生 |
個人事業主・法人 | 消費税 | 国税および地方税 1会計年度内で計算・算出した税金 ※消費税課税事業者が対象 |
医業収入の区分と税金の対象の概要
医業収入は大別すると「保険診療収入」「自由診療収入」「雑収入」の3つの区分に分けられます。
税金の中でも、「所得税及び住民税」は総収入から必要経費を引くという考えですので、すべて医業収入(取引全て)は税金(課税)の対象になります。
しかし、消費税や事業税に関しては、医業収入の区分によって課税の対象となるかどうかが変わってきます。そのため、経理処理を行ううえで、どの収入が消費税や事業税の対象になるのか判断の迷う取引がありますよね。
まず、医業収入の区分と法人税・所得税、消費税、事業税の関係を一覧にしたものが以下の表になります。
収入区分 | 法人税・所得税 | 住民税 | 消費税 | 事業税 |
---|---|---|---|---|
保険診療収入 | 対象 | 対象 | 対象外 | 対象外 |
自由診療収入 | 対象 | 対象 | 対象 ※一部対象外 |
対象 ※一部対象外 |
雑収入 | 対象 | 対象 | 対象 ※一部対象外 |
対象 ※一部対象外 |
このように、一つの医業収入の区分中でも「※一部対象外」が出てくるのが、ややこしいところです。
それでは各医業収入について、もう少し詳しくお話していきましょう。
保険診療収入の場合
「保険診療収入」についての定義としては、租税特別措置法第26条第2項の第1号から第5号に規定されているものが保険診療収入となります。
表にすると以下のようになります。
社会保険診療報酬 | Ⅰ:健康保険法 | |
---|---|---|
Ⅱ:国民健康保険法 | ||
Ⅲ:船員保険法 | ||
Ⅳ:国家公務員等共済保険法 | ※防衛庁職員給与法も含む | |
Ⅴ:地方公務員等共済保険法 | ||
Ⅵ:私立学校教員共済法 | ||
Ⅶ:戦傷病者特別救護法 | ||
Ⅷ:身体障害者福祉法 | ||
Ⅸ:母子保健法 | ※一部除く | |
Ⅹ:児童福祉法 | ||
Ⅺ:原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律 | ||
公費負担医療 | Ⅰ:生活保護法 | |
Ⅱ:感染症法 | ||
Ⅲ:精神保健福祉法 | ||
Ⅳ:麻薬取締法 | ||
Ⅴ:高齢者の医療の確保に関する法律 | ※一部除く |
上記表のほか、患者窓口負担金も保険診療収入に含まれます。
規定されている保険診療収入は消費税及び事業税の対象になりません。
自由診療収入の場合
基本的には保険診療収入以外の収入が「自由診療収入」となります。
内容 | 事業税 | 消費税 |
---|---|---|
自由診療報酬 | 対象 | 対象 |
差額ベッド代 | 対象 | 対象 |
高度先進医療の自己負担部分 | 対象 | 対象外 |
労働者災害補償保険法 | 対象 | 対象外 ※差額ベッドは対象 |
公害健康被害の補償等に関する法律 | 対象 | 対象外 ※差額ベッドは対象 |
自動車損害賠償責任保険法 | 対象 | 対象外 ※差額ベッド、文書料は対象 |
公務員災害補償法 | 対象 | 対象外 |
美容整形 | 対象 | 対象 |
健康診断・予防接種 | 対象 | 対象 |
診断書作成料 | 対象 | 対象 |
生命保険会社からの審査料 | 対象 | 対象 |
歯科自由診療 | 対象 | 対象 |
保険証忘れ自由診療 | 対象 | 対象 |
乳児検診 | 対象 | 対象 |
胃ガン健診 | 対象 | 対象 |
フッ化物塗布委託料 | 対象 | 対象 |
自由診療収入は基本的に事業税の対象となります。 消費税に関しては、多くの自由診療収入は消費税対象取引である場合が多いです。
しかし、自由診療収入の中でも消費税がかからない収入もあることに気を付けてください。
上記以外にも様々なケースがあります。その都度、消費税の課税対象になるかどうかの判定が必要になってきます。
消費税の課税事業者でなければ悩まない部分ですが、消費税の課税事業者の方は注意が必要です。
雑収入の場合
医療行為以外による収入が雑収入となります。
雑収入にも消費税の対象外となる取引があり、さらに、事業税に関しても対象外となる場合があります。
一例としての表は以下となります。
内容 | 事業税 | 消費税 |
---|---|---|
往診・訪問診療等の交通費 | 対象 | 対象 |
物品販売 | 対象 | 対象 |
貸与品使用料 | 対象 | 対象 |
仕入リベート | 対象 | 対象 |
従業員から徴収する食費、駐車場代等 | 対象外 | 対象 |
従業員から徴収する寮費 | 対象外 | 対象外 |
介護認定審査料 | 対象 | 対象 |
意見書作成料 | 対象 | 対象 |
祝い金 | 対象 | 対象外 |
事業用資産の売却 | 対象外 | 対象 |
雑収入について事業税の対象になるかどうかは医療法人/個人事業主でも異なります。
また、各都道府県で取り扱いが異なる場合があるので確認が必要です。
医業の収入は各種根拠法により取り扱いが異なりますので、十分に留意して処理をしなければなりませんね。
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